
兼六園から歩いて15分ほどのところに店を構える御菓子司 水本。たたずまいは控えめで上品さを感じさせながら、ことさらに「和」や「古都」のイメージを強調するところはなく、一見するところは、住宅街にある「まちの和菓子屋さん」。
その印象通り、近隣の住民をはじめ、金沢市民に広く愛されている和菓子店だ。
県内の大茶会をはじめ全国の茶会で人気
水本は、まちの和菓子屋さんと同時に、上生菓子の名店としても知られている。
百万石茶会や金沢城・兼六園大茶会など身近なイベント茶会から茶道家元の茶会まで、多くの茶席でも多く使われる。「茶会の主菓子はどこにしようか」と言えば必ずといっていいほど名前の挙がる菓子補でもある。お稽古でも水本しか使わない、という茶道の先生も多いのだとか。
県外の茶会から注文が入ることも少なくないというが、細工が繊細な上生菓子は、輸送にも細心の注意が必要なことから、店主さんが上生菓子の入った箱を抱えて現地に行くこともあるのだとか。
懐紙の上でこそ輝く正統派の上生菓子
金沢市暁町にある水本は、こぢんまりとした店構えながら茶道の世界では有名な名店。
その名店の上生菓子をいざ実食!
姿は、どちらかと言えば素っ気ない。
サイズは、今回食べ比べた数店の中では大ぶり。どっしりとした印象がある。
味は、甘みはしっかりと強め。季節の風物をかたどっているが、例えばフルーティな香りや風味はプラスされていない。というか、甘みをしっかり感じられるように風味の強いものは使わないのだろう。
とはいえ練り切りはどこまでもなめらかで、包み込まれたあんには荒く潰したうぐいすあんや粒あんなども使われていて、食感も十分に楽しめる。
一番見てもらいたいのは、一見素っ気なく見えた水本の上生菓子が、懐紙の上に移した途端に輝き出すこと。古い日本画や友禅模様に通じる省略の美が水本の菓子にはある。
強く感じた甘みも、抹茶の風味と香りを引き立てる。
つまりは、水本の上生菓子は正統派中の正統派といえる茶会用の菓子だということ。
食べる際には、是非! 是非、是非、懐紙を使って食べて欲しい。
今回食べたのは、
ひとつは「落し文」。
落し文とは、そもそも広葉樹の葉を筒状に巻いて巣にし、中に産卵するオトシブミ科の昆虫の総称。雅な時代には、この筒状の葉を、人目をはばかる手紙や恋文などを直接渡さず渡したい人の近くに落として拾わせる置手紙に見立てて落とし文と呼ぶようになったのだとか。俳句でも初夏の季語として使われている。
もうひとつは「紫陽花」。
「移り気」の花言葉を持つアジサイの憂いを紫をアクセントに淡い青と白で表現し、花びらを塗らす雨を錦玉(寒天ゼリー)であらわした(と勝手に思っている)しっとりとした菓子。
あえてお天気の悪い日に、その空模様を楽しみながら食べたい。
上生菓子 一個250円前後(税抜き)
店舗DATA
御菓子司 水本
石川県金沢市暁町14-3
076-261-6646
営: [平日・土曜日] 08:00 – 19:00
[日曜・祝日] 08:00 – 17:00
休:月曜
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